渡辺 努 『世界インフレの謎』(2022.10 講談社)
「インフレ、インフレ、インフレ」
202年下半期、世界中の人たちが実際に体験しています。では、なぜここまでインフレが進んでしまったのか?と疑問が湧くのは必定ではないでしょうか。
本書では世界のインフレについて完璧に解説がなされていますので、これ一冊読めばその謎が解決するでしょう。
ここからは本書の内容を軽く紹介します。
現在のインフレについて
インフレには2種類あります。
- 少ない供給
- 強すぎる需要
ここで、中央銀行は強すぎる需要に対しては利上げなどによって対処できますが、少ない供給に対処できません。そして、今起こっているのは少ない供給によるインフレなのです。
少ない供給は新型コロナウイルスによるパンデミックによって人々の行動は変容した、という事象がインフレのトリガーになりました。
天災や戦争は生産設備にダメージを与えるので、供給力が低下してインフレが起こります。
一方、パンデミックは生産設備にダメージを与えていません。では、一体どのような傷跡を残し、インフレが到来したのでしょうか?
ここが本書の重要なポイントになります。
少ない供給を解決するためには1つとして各国の協力関係を見直すなど、経済の大きな仕組みを変えないといけません。
日本のインフレ
海外からインフレの波が慢性的なデフレの日本を飲み込みました。
日本は急性インフレ×慢性デフレという矛盾した状況に陥っているのです。
物価上昇しているのに賃金は上がらない。もしくは安定的に両者上昇するのか。
日本はインフレ率世界最下位でした。そのため、日本は長期のデフレを経験したため、国民は価格の値上げに対して嫌悪感を持つようになりました。
これは国民のインフレ予想が低いことに繋がり、欧米人と比べるとそれが顕著に表れたデータが紹介されていました。
インフレ予想の低さは企業の価格据え置き慣行の発生に繋がります。これにより、物価は上がりません。
賃金・物価スパイラルというものがあり、賃金と物価は密接な関係にあります。労働者が賃上げ要求をすることで、企業は価格の値上げします。その価格上昇分を補うために商品の値上げをします。商品を値上げすると、消費者の生活費が上がります。そして消費者(労働者)は賃金値上げを企業に要求するというわけです。
日本はOECDの中で賃金上昇率はワーストで、それに伴い物価も上がりません。
パンデミックによる行動変容をプラスに変えて、日本は慢性デフレからの脱却に繋がるのか。日本の未来は今私たちの行動にかかっているのです!