2022年に大学生が読んだ小説の感想とオススメポイントを紹介 第2弾

オススメ紹介

『黒牢城』米澤穂信

荒木村重 × 黒田官兵衛 本当の戦国ミステリーここにあり!

戦国時代の雰囲気、上の立場への言葉遣いや態度、歴史に忠実な設定と
戦乱の世について詳しく学べる × ミステリーとしての面白さ

がシナジー効果を発揮しています。さすが直木賞作。

主人公の荒木村重は織田を裏切り、毛利や本願寺と繋がり、打倒信長を目指します。ですが、みなさん御存知の通り信長は強い。周りが織田ヘ降り、焦りが荒木村重を支配していきます。

そんな時に黒田官兵衛が現れます。村重は頭を捻り、意図を持って官兵衛を牢屋へぶちこみます。

その後、4つの謎・事件が起きます。頭のキレる村重ですが、それ以上の頭脳を持つ黒田官兵衛。一体、暗黒に近い牢屋にいる官兵衛は何を考えているのか?

戦国ミステリーが解禁します。

戦国好きの私は、見事に引き込まれました。まさにその時代タイムスリップして、上から俯瞰している、もしくは村重の隣立っているかの如く、読書の時間を楽しんでいました。

「素晴らしかった」の一言で締めます。

『女のいない男たち』村上春樹

この言語化することが難しい独特な世界観はたまらなく面白い

あの話題の映画『ドライブ・マイ・カー』が収録されている短編集です。

どの作品も「愛する者を失った人」が登場します。

その人物から漂う、もうその愛していた人と絶対に合うことのできない、また最盛期に戻ることの出来ない事実から生まれた悲壮感と、村上春樹でしか見られない鋭いメタファーが村上ワールドを形成していきます。

そのような世界が綴られる文章は非常に読みやすく、先にどのような展開が繰り広げられるのかという興味が唆られてページが進むことでしょう。

そして、結論がぼやけていて読者にその先を想像を駆り立てるような終わり方というのも読み応えのあるポイントでした。最後は完全な状態で物語の終止符が打たれるのではなく、不完全な状況で余韻を持たせて終わる小説の魅力を十分に感じました。

村上春樹の短編集は本当にオススメです!

『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成

読者を自在に手玉に取る傑作就活ストーリー

「就活」・・・自由に過ごして、楽しい期間の最後に待ち受ける狂宴

ある6人の優秀な大学生が初任給が超高額という一流IT企業の就職試験に挑む物語です。

最終面接はグループディスカッション、6人は協力して皆で内定を勝ち取ろうと意気込む矢先に、人生を左右するトンデモナイ事態が起こります。突如ミステリー小説モードに切り替わるのです。

ストーリーは今まで読んできた小説の中でトップ1%に入る、と言えるぐらい引き込まれました。

この小説のポイントは「相手の人間には裏の顔がある。表側だけ見てその人となりを判断することは不可能だ」ということです。

これは就活にも言えることで、たった数時間の面接で相手の本質を見抜くことは出来ず、適切に評価することは難しいでしょう。

短期間での6人の大学生の交流と就活という似た側面を持つ2つの物事がどのように交錯していくのか

とにかく、読んでいてい楽しかったです。

『元彼の遺言状』新川帆立

お金至上主義な気の強い女性弁護士が奇妙な仕事に携わっていくうちに起こる変化に注目!

ドラマが放送されて注目の小説となっている『元彼の遺言状』

主人公の弁護士・剣持麗子は気が強過ぎ、自分への自身が満ちているような女性です。そんな彼女の元彼が亡くなり遺言状が見つかったと知ります。

その元彼は大手製薬会社・森川製薬の一族だったのです。そのため、彼の遺産は莫大なものでした。

しかし、遺言状の内容は「全財産を僕を殺した犯人に譲渡する」という前代未聞・奇抜すぎるもので、ここから主人公・剣持麗子を始め、様々な人物の思いが交錯していきます。

また、新たな殺人事件も発生して、剣持麗子は後に引けない状態となっていきます。

お金を稼ぐために弁護士として事件に関わっていくという新たな視点で語られるミステリー。そのミステリーも一番憎いはずである犯人に遺産を渡すという矛盾して遺言状の内容と、いよいよ面白そうなオーラを纏います。

莫大な遺産×遺言状の内容で振り回される遺族という構図はよく聞く話ですが、今回は唯一無二の話でさすがドラマ化される小説だと感じました。

『ペッパーズ・ゴースト』伊坂幸太郎

ニーチェ・野球・超能力・テロ・悲観主義者・ネコetc と伊坂幸太郎の好きなあらゆる物が詰め込まれ、予測不可能な展開へと導く小説!

まず、ペッパーズ・ゴースト = 「劇場などで使用される視覚トリックである。板ガラスと特殊な照明技術により、実像と板ガラスに写った「幽霊」を重ねて見せることで、効果を発揮する」
(Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ペッパーズ・ゴースト)

この小説では3つ視点が交錯し、まさかの展開へと導いていきます。

壇先生

中学教師の壇はとある特殊能力を持っています。それは他人の明日起こる未来の一部を見ることができる能力です。

女子生徒が書いた小説に登場するコンビ

女子生徒が書いた小説です。内容はネコを虐待した人々に制裁を加えるという依頼を受けて活動中のネコジゴハンターの二人です。悲観主義者と楽観主義者のコンビです。

サークル

生徒の父親で国を驚異から守る仕事を担当している公務員が所属しているサークル。そこではニーチェの思想(同じ人生は永遠繰り返すという永遠回帰など)が浸透しています。何やら不穏なサークル

この3つの立場が交わる時、伊坂ワールドに引き込まれていくでしょう。

伊坂幸太郎氏の小説は本当に面白い!本書を読んでより確信が深まりました。

『いのちの停車場』南杏子

地元金沢に帰ってきた医師が在宅医療の現場で直面した光景とは!?

地元金沢に帰ってきた医師が在宅医療の現場で直面した光景とは!?

主人公の白石咲和子はベテランの医師として都内で働いていたが、とあることがキッカケで高齢の父が一人で過ごす金沢の地へ帰ることになります。

しかし、そこで在宅医療を行う診療所で働くことになります。

在宅医療先で出会う人たちは死期が迫っている人が多く、その患者に加えて看病をする家族も過酷で辛いという状況を目の当たりにしていきます。

そのような光景を見た後に看病する立場となった咲和子が思うこととは?

一日でも長く患者を延命させる医師の宿命は果たして絶対善なのでしょうか。毎日辛い痛みに耐えて、苦しむのはもう御免という意志を持つ患者がいた場合は安楽死を施すべきなのでしょうか。

この医師としての立場を優先するのか、患者の意志を尊重するのか。この葛藤を咲和子の感情の起伏と共に見事に描いています。感情移入してしまうこと間違いありません。

「安楽死」という難しいテーマについて考えさせられる、壮大な小説でした。 

『西の魔女が死んだ』梨木香歩

一度読めば、自然に囲まれたお家で魔女修行を始めた少女と祖母の生活を忘れることはないだろう

魔女が亡くなった。

この知らせを聞いて主人公のまいはあの日の生活を思い出します。

学校へ行くのが嫌になった「まい」はイギリス人で自然に囲まれた田舎の家で暮らす祖母と一時的に過ごします。そこでは、祖母の自然豊かな土地ならではの知恵を学びつつ、快適な生活を送ります。

そんなある日、「魔女」という言葉を耳にします。魔女は魔法を使いほうきに乗って飛ぶような人ではなく、昔の時代に超能力的な力で人々に影響を与えたような人です。

そんな魔女になるにはどうしたら良いのかとまいは祖母に尋ねると、「何でも自分で決める」ということでした。

自分の直感を盲信してしまうとそれに反することは見えなくなるので、心の端にそっとしまい現実を向き合うなど、人生で大切なことを教えてもらいます。

自然あふれる暮らしで成長していくまいの姿を追うことで、読者にとっても忘れならい景色や空間、教えを読み取ることができるでしょう。

やはり自然を360度体感したいという欲望は人間の隠された本能だと強く感じた一冊でもありました。

『流浪の月』凪良ゆう

一味違った、恋ではなく自分の居場所を求める二人の男女の物語は間違いなく傑作!!

映画化された小説ということで期待を持って読み進めていきました。さすが、映画化されるだけあって深いメッセージ性と読者の心を動かす展開でした。

主人公の更紗は自由な両親に育てられ幸せな小学生時代を送っていました。しかし、父は亡くなり、母はどこかへ行き一人になってしまいます。ひとまず伯母の家に住むことになりますが最悪な生活を過ごすことになります。

そんな時、更紗はいつも公園で小学生の遊んでいる姿を見ている、小さい子供に性的嗜好を抱いていると気味悪がられていた大学生についていきます。

その大学生・文(ふみ)との一時的な生活が更紗の人生を変えることになります。彼との生活は大きな安心感に包まれ自由に過ごしていきます。しかし、世の中は誘拐事件として捉えられ、更紗は少児性愛者に酷いことされた可愛そうな女の子として、文は誘拐犯としてレッテルを貼られるます。

それから、数十年経って大人になった更紗はどのような運命が待ち受けているのか?

過去の事件に対する世間に振り回され波乱の展開へと読者を誘っていきます

この小説の大きなポイントは「事実と真実は異なる」です。誘拐犯に可哀相なことをされた少女と最悪の誘拐犯という表面上だけを見ればこれが事実と信じていしまいます。しかし、実際は更紗が自ら付いてきいき、文は何も酷いことはせず快適な環境を提供したのが真実です。

何が正しいのか。何事にも価値観や一方的な側面からの情報だけで判断せずに、本当にその情報は正しいのかきちんと考えて結論を出していくことが大切だと感じさせられた小説でもありました。

『テスカトリポカ』佐藤究

これほど壮大な物語は他にあるのだろうか?と思わされた、唯一無二の小説!!

超大作!!という言葉がピッタリの小説でした。

テーマは裏社会のビジネスです。何を扱っているのかはご想像の通りで、一般人には無縁の商品が取引されます。人体のやり取りもです。

メキシコの麻薬戦争やカルテル、東南アジアでの闇取引、中国マフィア、暴力団、臓器ブローカー、密入国など闇物のオンパレードです。

また想像もつかないような残酷な光景も次から次へと描かれていきます。

メキシコ生まれの男と日本人闇医者が交わったとき、言葉に出来ないような残酷なビジネスが幕を開けることになります。読者は確実にこの世界にのめり込んでしまうでしょう。

そして、この小説には超重要な歴史を扱います。

それは「アステカ文明」です。タイトルの「テスカトリポカ」は主要な神の名前です。表表紙の絵がそれです。特に、アステカといえば生贄の心臓を神に捧げる儀式でしょう。

教科書で見たことがあるかもしれません。特有の文化、儀式、服装を持つアステカの血が現代の闇ビジネスへと繋がります。

この小説の読了後は心があちらの世界へと没入してしまいますので、ご注意ください(笑)

『赤と青とエスキース』青山美智子

運命の巡り合わせで完成された、ある女性を書いた一枚の絵が織りなす感動の物語

2022年の本屋大賞2位の作品です。

第一章では、オーストラリアのメルボルンに留学中の日本人レイはあだ名がブーという日本人に出会います。その後、留学が終わるまでという期限付きの交際に発展します。しかし、期限が近づくに連れて二人は別れることの悲しさを覚えることに。ブーは彼女の姿を残すために友人の画家にレイの絵を書いて欲しいと依頼します。画家はエスキース(=作品を制作するための着想、構想、構図を描きとめた下描き)として画家はレイの絵を描きます。

第二章以降でその絵がある人たちの未来を変えることになるのです。

絵画は人を動かす秘められた力を持っており、絵画が生き続ける限りその力は衰えないと感じました。絵をテーマにした小説は感動の展開へと導いてくれ、読者の心に刻み込まれる。そんな最高の小説です。

『余命10年』小坂流加

余命宣告された若き女性。もうそんなことはしないと決意していたが、それには勝てなかった。感動のラブ・ストーリー

いまいちばん泣ける恋愛小説 というレッテルが貼られている小説です。

タイトルの『余命10年』からは、「これは感動系の話だな。さぞかし、良い話なのだろう。」と思いました。みなさんもそう感じるのではないのでしょうか?

本書は題名からハードルを上げている小説ですが、自分で上げたハードルをいとも簡単に飛び越えてしまうものでした。

二十歳に余命10年と申告された主人公は残された時間をどうするかと考え、友達と自分の好きなことして、時には挑戦をするなど、有意義に過ごします。

しかし、恋愛はしないようにと考えます。どうせ自分は寿命が短いから、相手を遺すことになり、期限付きの交際となってしまうからです。

それにも関わらず運命のイタズラが起こるのです。

本小説の読了後、もし私が主人公と同じ宣告をされたら、どのような生活を送るだろうと考えてしまいました。主人公と同じように楽しい時を過ごせるのかとも感じました。

『余命10年』を読むことで、あたりまえに送れる生活への感謝の念を抱けることでしょう。

『破船』吉村昭

風習が支配する貧しい村のまさかの結末に驚きを隠せない。一度読めば忘れられないとはこのことだ!

2022年本屋大賞『発掘部門』で「超発掘本!」を受賞した作品です。

まさしくこの本は地の深くに眠っていたお宝で間違いありませんでした。

私は前から吉村昭氏の小説が好きでしたので、まあ当たり前の結果でしょう笑

あらすじは、崖近くにある貧しい村のお話。主人公は伊作という青年で、彼の視点で描かれていきます。その村は「お船様」の到来を祈願するという風習がありました。

「お船様」とは米など荷を積んだ船のことで、村人はそのような船を浜で火を焚くことでコチラに誘き寄せ、浅瀬の岩盤で船を破壊して荷物を奪うのです。ある年は「お船様」の到来で多くの米を手に入れることができ、飢えを避けることができ、村中が歓喜します。

そして、またしても「お船様」が到来します。そこからが悲劇へのトリガーとなります…..

読了後の感想は、「怖すぎる」です。終始いびつな雰囲気を帯びた小説(表紙絵のような)で、案の定その不安感が最後に爆発しました。一味違う小説を味わいたければ、是非本書を….

『同士少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬

戦争小説の最高傑作ではないだろうか。

2022年の本屋大賞受賞作品であり、且つ戦争小説と期待大の作品の1つでした。

あらすじは、第二次世界大戦の独ソ戦に従軍した女性狙撃手・セラフィマの姿を描かれていきます。家族と村をドイツ兵に奪われ、何もかもを失ったセラフィマは敵を撃つべく訓練を受けて、実戦を経験します。彼女はそこで見た戦争の現実を目の当たりにして「敵を撃つ」とは、「何のため・誰のために戦うのか」を自問自答していき、導き出した答えとは? 成長の物語です。

本小説は忠実な歴史と戦争のリアルさを取り入れているため忘れられないような酷い描写もあり、読者を一層と戦闘の中に引き込みます。その上で登場人物の心情も繊細に表現されるというハイスペックさ

全てにおいて、ぶっ飛んだ大作です。

『夜行』森見登美彦

森見登美彦特有のストーリーで読者を不思議の世界へと招いていくれる

英会話スクールに通っていた仲間と京都の祭りに行った際に長谷川さんが姿を消して10年が経った。再度同じ仲間と祭りに行くために集まります。そこで集まった4人は奇妙な出来事を話す(ファンタジーさが溢れる森見ワールド)。どの話にも銅版画家・岸田道生の『夜行』が関わるという奇妙な偶然から、徐々に明らかになる長谷川さん失踪事件の謎とは?

この小説の面白いポイントはストーリーもそうですが、4人のそれぞれの話が謎めいた体験談で飽きが全くこない点です。「ここからどうなるんだ?」という好奇心が湧き水のように溢れ続きます。

岸田氏が『夜行』に込めた真実を是非究明して欲しいです。

『スモールワールズ』一穂ミチ

小さな世界で起こる個人的な問題を抱えた人たちの物語

タイトルの通り、小さな世界で起こる心が和む短編集です。

人は様々な問題を抱えて生きています。本小説の主人公たちの抱えている問題は少し厳しいものですが、それを乗り越えていく姿には感動を覚えました。

読了後、この小説で繰り広げられるような小さな世界の集合体が、この世界を形作っているのだろうと、人間社会の壮大さをも感じ取りました。

さすが本屋大賞上位作品だと、このような物語を読者に登場人物の感情を届かせる豊かな文章を綴れる著者に対して尊敬の念を抱きました。

『高熱隧道』吉村昭

実際にあった難工事のリアルを描いた吉村昭の傑作ドキュメンタリー小説!

日本電力黒部川第三発電所のトンネル工事における過酷な状況に翻弄された現場の人々を技師幹部の目線から描いた小説です。

読了すれば、観光名所の黒部ダムには凄まじい歴史があることが記憶に刻まれます

多くの犠牲を払って完成されたこの工事。その犠牲の裏には何が起こっていたのか。

責任を感じる幹部と、恐れを抱きつつも家族のため、高い日当のために働く人夫の姿が見事に表現されており、読者はこの工事の実態が手に取るように分かるでしょう。

『四畳半タイムマシンブルース』森見登美彦

あの四畳半の世界にタイムマシーンの登場は面白くないわけがない!

四畳半のメンバー(小津、羽貫さん、明石さんetc..)の元にタイムマシーンが突如として現れます。過酷な四畳半の夏を乗り越える為に、壊れてしまった「クーラーのリモコン」を救うべく。

しかし、過去を改ざんするということは時空連続体が狂い、世界が消滅するということに気づいた「私」が取った行動とは。

ゆかいな仲間たちと共に過ごすハチャメチャの夏物語が始まります。

もう夏は終わりですが、絶対に読んで欲しい小説の1つです!

『犬がいた季節』伊吹有喜

とある高校で飼うことになった捨て犬と共に眺める、感動的な生徒たちのお話

昭和から平成の間のとある5年の犬の世話をする会の生徒(主に会長)が過ごした1年が描かれます。舞台は三重県、高校3年生の彼らは大学受験を控えて、未来への不安を抱えています。

ですが、高3の1年で経験する「最も印象に残ったこと」が彼らを力強く羽ばたかせていきます。

その「最も印象に残ったこと」までの経緯と犬からの視点は感動間違いなしです。

読了後、この小説の世界の余韻を深く感じていました。あなたも感じてみては??

『熱帯』森見登美彦

森見ワールド全開のストーリー。あなたを謎に包まれた『熱帯』の世界へ誘う。

どうしても最後まで読むことができず、読んでもストーリーがおぼろげになってしまう謎に包まれた小説『熱帯』。
加えて、本そのものが姿を消してしまうという、自我を持っているかのような『熱帯』。
この本ががどのような話なのか、一度読んだことがある人集まり、内容を究明しようと読書会が開かれます。
そこからだんだんと明らかになる『熱帯』誕生の秘密とは?
この小説は個人的に衝かなりの衝撃作でした。
誰がこんな展開を予想できるのだろうか、複雑な展開を生み出した著者には驚くばかりです。
もう一つのポイントは、情景描写の華麗さです。独特な『熱帯』の世界観を楽しめます。
一味違う小説でした。

『君の膵臓を食べたい』住野よる

過去一、感動した小説と言っても過言ではない!!

誰もが知っているタイトルでしょう。

分量は少な目ですが、内容の濃さは他より頭何個分も突き抜けいるほど素晴らしかったです。

クラスでは目立たない存在で、他人に興味がない文学少年の名前の無い主人公は、クラスメイトで人気者の山内さんの秘密を偶然知ってしまいます。

これ主人公の人生を一変させることになるのです。

その過程の、山内さんとのやり取りや主人公の下した決断の数々と終わりが可視化された関係が紡ぎだす、感動の小説です。

それにしても、寿命がわずかにもかかわらず、明るく残りの人生を最高に楽しむ山内さんの姿勢には見習べきものでした。

『ツナグ』辻村深月

死者と生者、決して交われない関係が交わる時、生者は何を受け止めるのか。

辻村深月氏の代表作とも言える『ツナグ』。

亡き憧れのアイドルに、親友に、母親に、愛する人に、会いたい人たちが連絡した「使者」。

「使者」は彼らの願いを叶えて、今は亡き人たちとの再会の場を設けます。

短い時間で今生きている者は、会いたかった人と話して何を想うのか。

会う前と会った後の彼らの姿はどう異なったのか。

この小説は非常に深く、考えをさせられるものでした。

世の常に反する死者との再会、それが必ず良い影響を及ぼすのか、それとも一生残る深い傷を負うものになってしまうのか。もし、現実に「使者」が存在したのなら、私はどのような判断を下すのか、読者は登場人物に重ね合わせて考えることになるでしょう。

『母性』湊かなえ

娘と母からの視点の交わって進行する「愛・母性」を丁寧に扱ったミステリー

11月に『母性』の映画が公開されるので、注目の小説です。

まず初めに、女子高生の娘が自ら命を絶とうした事実が明かされます。そこから、当事者の女子高生の回想とその母の手記が順番に登場します。果たして、なぜ女子高生は自分の人生を捨てようとしたのか、数々の思いが複雑に絡み合った衝撃の事実が明かされていきます。

とにかく、この母が問題人物でした。母は自分の母親を喜ばすという基準を元に人生でのあらゆる決断をするという、行き過ぎた母への愛を持っていました。それが原因で自分が娘を育てる母親となったとき、「母性」はどうなってしまうのか、が本作品の見所でした。

人の心情と「母」をこれほどまで緻密に描ける著者の筆致には感激しました。

『羊と鋼の森』宮下奈都

一人の無垢な青年が調律に挑む、人間の最高傑作である音楽を荘厳さを描く

『羊と鋼の森』はタイトルがどのような内容の小説なのか推理するのは難しいでしょう。

なんと音楽、特に楽器ピアノに焦点を当てた青年の成長物語です。

しかし、主人公はピアノを奏でる側ではありません。調律師なのです。

森に囲まれた北海道のある地で育った主人公はピアノと無縁の人生でしたが、ある調律師との出会いで調律の世界に入ることを決意します。

そこで見た音楽の繊細さに対して、主人公が目にする景色とは。

微調整を繰り返してベストな響きにピアノを調整する調律師の仕事は繊細で、ピアノを弾く側からするとまさに縁の下の力持ち的存在でした。調律の森がどれほど奥深いものかが思い知らされました。

読むと本当に温かい気持ちになれる小説でした。

『ルビンの壺が割れた』宿野かほる

主観的な視点から語られる二人の過去から、まさかのまさかの展開に!

ルビンの壺」とは、同じ絵が見方によって、向き合った2人の顔にも大型の壺にも見える絵です。かなり有名な絵ですので、見たことがあるでしょう。

その「ルビンの壺が割れた」とは、何を示唆しているのか、衝撃的な展開を突破して読了すれば理解できるでしょう。

Facebook上のやり取りのみが続く、約160ページの短い物語ですが、内容の密度は水銀を超えます

『クジラアタマの王様』伊坂幸太郎

パンデミックが起きた現在と重なる、夢(あちらの世界)×現実(こちらの世界)の物語

伊坂幸太郎氏の小説は殺し屋シリーズや悪魔が仕事をするなど、設定が面白い。

この小説は睡眠時に見る「夢」が鍵となります。主人公の会社員はその「夢」によって、芸能人や議員と関わりを持つようなります。

そこから始まる困難の数々と「夢」の関係が徐々に明らかになっていきます。

読み進めると、無駄な場面がなくて読みやすく、且つ先がとにかく気になってしまうという「伊坂マジック」に魅了されることでしょう。

『アキラとあきら』池井戸潤

真逆の境遇であった幼少時代を過ごした二人の「あきら」が大人になった時。

零細企業の長男として生を受けた「あきら」は厳しい状況に直面します。対照的に、もう一人の「あきら」は日本屈指の大企業の御曹司として生を受け、社長の厳しさを目の当たりします。

そんな幼少期を過ごした二人の「あきら」が選んだ道とは? 二人が交錯する下巻に入ると二人の人生から目を離せないでしょう。

本小説は二人の幼少期のエピソードが詳しく描かれいるからこそ、下巻にて二人への感情移入が止まりません。

是非とも味わって欲しい読書体験です。

『夜明けの街で』東野圭吾

不倫×ミステリー と異色の組み合わせの小説!

傍から見れば、良き妻と幼い子供がいる理想的な家庭を持つ父。しかし、主観的に見ると将来が決まっているのでやるせない気持ちを持っているかもしれない。

そんな心情を抱えていた主人公のサラリーマンは不倫をしてしまいます。

離婚をして、不倫相手との未来を歩むのか。はたまた、そうはしないのか。

揺れ動く心の中、相手の女性の過去にはとある事件が、、、。その事件の時効成立が迫りくる今、彼らの運命はいかに。

という内容です。主人公の禁断の恋と妻への罪悪感、しかし抑えきれない愛情を描く東野圭吾氏の技量は圧巻!

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