本書の情報:
アルトゥール ショーペンハウアー (著) 鈴木 芳子 (翻訳) 『読書について』(2013.5 光文社)

本当に価値のある読書とは何なのか、今一度深く考えるキッカケとなる本
ドイツの哲学者ショーペンハウアーが『読書について』とどストレートなタイトルで、私たちに、特に愛書家にズバッと刺さる主張が数多くありました。
私が読んだ光文社古典新訳文庫では、『読書について』の他に2篇収録されており、どちらも強くて真っ直ぐなショーペンハウアー氏の言葉が幾多にありますので読む価値があるでしょう。
今回は本書から学んだことを軽く取り上げますので、興味を唆られた方(特に読書家)は是非手に取って欲しいです。
自分の頭で考える
本を読むことは自分の頭ではなく他人の頭で考えること
という強烈なメッセージと、
自分の頭を使って辿り着いた考えと、読書から得た考えとでは全く価値が異なり、自分の頭で考える人と読書好きの博識家では天と地の差がある
天才などの人類を進歩させる人は世界という書を直接読破した者
という内容に衝撃を受けました。
自分の頭で考える者は真剣に根本的なことに目を向けるが、愛書家は何もかもが中古的で自分の力で何も生み出せない、という読者にディープインパクトを与える一撃もありました。
一流の人は自分の力で判断し行動しますが、それ以外の自分の頭を使わない人はただ従うだけの受動的な存在となってしまいます。勿論前者の方に成りたいですよね。
自分の頭で考えることの大切さをショーペンハウアーは強く伝えたかったと思います。
ですが、自分の頭で考える続けることはできないので、そんな時は読書を推奨しています。
注意点として、読書主導ではなく、自分の頭主導が良いということです。
著述と文体について
ドイツ人の文体・著述への批判が目を引く篇でした。劣悪な書物とはどのような物を指すのか具体的に論じられています。
中でも物を書くにあたっての姿勢について参考になりました。
本当の簡潔な文章の書き方は伝えるに値することだけを書き、無駄な言葉を使わないこと
そのために、簡明簡潔に考えること・微妙なニュアンスを完璧に表現する言葉たちを自由自在に扱える国語力・語彙力が必要
とあり、根本的には、深くて書くに値する思想があれば自然と簡潔な文章になるので、豊かな思想を手に入れることが大切と論じられていました。
そのためには自分の頭で考える力が必要となるのでしょう。
読書について
もう一度になりますが、本を読むことは自分の頭ではなく他人の頭で考えることなのです。つまり、読書ばかりして、自分で物を考えずに他人の考えばかり頭に入れていたら、自分の頭で考えるが損なわれていくのです。
ですが、読書そのものは否定しておりません。
ショーペンハウアーは「悪書は注意力・時間・金を奪い害をなす」と書き、日々出版される凡人の駄作を徹底的に侮辱し、偉大な人物が書いた永久に不滅な真の文学を読めとあります。
また、そのような重要な文学は続けえ2度読めとあり、読書における反復の大切さを説いています。
このように、ショーペンハウアーの辛口な読書に対する向き合い方を示してくれる『読書について』は衝撃的な内容ですがそこから得られるものは大きいので、オススメ哲学書です。