『火の鳥』『ブラックジャック』『鉄腕アトム』で知られる偉人・手塚治虫の『奇子』(あやこ)はそれらとは一風異なり、恐怖・不気味の要素が強すぎるストーリーでした。
舞台はGHQの占領下の日本で、地方の旧家である天外(テンゲ)家の動乱が描かれます。戦争から帰還しGHQのスパイとなった仁朗は天外家に戻る。が、父が権力を握る天外一家の人間関係は混沌としていた。また、奇子という仁朗にとって謎の少女がいた。
その後、仁朗はGHQの指令で共産主義の男が殺される淀山事件に関与する。そこから、天外家の歯車が徐々に崩壊しだす。結果的に仁朗は一家を離れ、奇子は世間的に死亡とされ、10年以上も地下に閉じ込められる。常識を知らずに美しい女性へと変化した奇子が、日の目を浴びてから物語はエンディングに向けて進み出す。
といった内容です。
もうあらすじから怖いですよね。また表紙からもその物語の不気味さが滲み出ています(下の画像ではなく、私が読んだ角川文庫の表紙は)。
奇子を含めて天外家の人がどのような運命を迎えるのかも見どころですが、それ以外にも注目ポイントが多くあります。
天外家の人間関係・金・権力、世間と隔離された子供時代を過ごしたことによる奇子の人間性と性意識、仁朗の壮絶な人生、仁朗を追う警察内部の様子、国鉄三大ミステリー事件の一つである下山事件の登場などなどです。
もちろん、ラストシーンは私の予想の斜め上でインパクトがあり、『奇子』は特に記憶に残る漫画となりました。
ちょっと何か刺激の欲しい漫画が読みたいなと思っている方にはオススメの作品です。
いやぁー、「奇」を思いっ切り感じました。
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