本書の情報:
エリオット・ヒギンズ (著), 安原 和見 (翻訳)『ベリングキャット』(2022.3 筑摩書房)
あなたは「べリングキャット」という組織をご存知でしょうか?
私はこの本を目にして初めて知りました。サブタイトルは『デジタルハンター、国家の嘘を暴く』で、本の帯には「権力者は平然と、見えすいたウソをつき、一般市民がどのようにして立ち向かうのか。」といった内容が書かれていました。
こんを見れば間違いなく興味を唆られ、手に取ってしまいました。
著者はべリングキャットの創設者エリオット・ヒギンズ氏。本書では
- べリングキャットの始まり
- どのようにしてオープンソースを用いて捜査するのか
- アラブの春における地道だが驚くべき調査
- ロシアやシリア政府の嘘やウクライナで民間機を撃墜した黒幕を暴いた経緯
とここまで凄いのかと感嘆とさせられる内容の宝庫でした。
以下では軽く本書を紹介します。
べリングキャットについて
現在、SNSの普及で価値のある情報のほとんどが誰でも閲覧できるオープンソースから手に入るようになりました。
そんな膨大な情報に目を付けたのが著者のエリオット・ヒギンズ氏です。
アラブの春における動乱を危険な紛争中の現地に出向くことなく、パソコンを置いたデスクの前で調査を始めたのです。これがキッカケとなり、大きな影響を持つ組織へと繋がっていくことになります。
ヒギンズ氏は調査して得られた内容を空き時間に自身のブログに書きます。これがどんどん注目を浴びて、多くの専門家を巻き込んでいったのです。
その後、オープンソースを調査して事実を究明していき、最先端の技術をシェアして誰でも活動できる共同体・プラットフォームを作ります。これがべリングキャットの始まりです。
モットーは特定・検証・拡散を掲げて、様々な事件をオープンソースを用いて調査します。
代表的な実績がマレーシア航空撃墜事件の真相を追求したことです。ウクライナを飛行中の民間機がミサイルによって撃ち落とすされた事件です。記憶に残っている方も多いでしょう。
べリングキャットはネットに挙げられた現地の兵士が撮影した動画などのオープンソースを元に、グーグルアースで場所を特定したり、使われた武器の行方を追うことで、ミサイルで旅客機が撃ち落とされた証拠を見つけます。
オープンソースだけでプロ以上の成果を出し、どれだけSNSに挙げられた動画が重要な証拠となるのか分かるでしょう。
べリングキャットは虚偽報道や情報操作によるプロパガンダなどの事実確認を行うプロジェクトやAIを用いて動画を分別するなど、今日も進化を遂げています。
新型コロナ関連の情報操作の嘘を見抜く方法の紹介など行っているといいます。
現在進行系のロシアによるウクライナ侵攻も力を入れて捜査していることでしょう。これからの動向に注目するしかありませんね。
以上。本書の紹介でした。