本書の情報:マシュー・サイド (著), 有枝 春 (翻訳)『失敗の科学』(2016.12 ディスカヴァー・トゥエンティワン)
人の失敗から学びましょう。自分で全部経験するには、人生は短すぎます。
エレノア・ルーズベルト
自分の考えや行動が間違っていると指摘されるほどありがたいものはない。そのおかげで、間違いが大きければ大きいほど、大きな進歩を遂げれるのだから。
ブライアン・マギー (イギリスにおける哲学解説の第一人者)
失敗に関する2つの偉人の言葉を引用しました。
本書が私たちに伝えたいことは大まかに言うと、上記の言葉通りです。
あなたは失敗についてどう考えていますか?
読む前の私でしたら、「失敗は悪。できるだけ失敗から程通り人生を送りたい!」
と考えていました。ほとんどの方は私と同じでしょう。
ですが、『失敗の科学』読了後は、私の失敗に対する考えは愚か者のそれだと分かりました。
なぜなら、
- 「失敗とどう向き合うか」が人類が進化し成功する鍵
- 人間は失敗から学んで進化する
- 成功者は「失敗は欠かせない」と考えている
- まず、間違いを指摘するフィードバックないと失敗から学ぶことができず、一生進歩しない
からです。
失敗について考え直した方は必読の書だと言えます。
以下では、軽く本書から私が学んだ内容をまとめます。
認知的不協和の恐ろしさ
人は誰でも自分の失敗を認めるのは難しいと言います。他人から非難されないように、自尊心が傷つかないように、失敗を認めず隠してしまいます。
本書の目的は失敗は「悪」という捉え方を覆し、仕事や日々の生活で最善のパフォーマンスを引き出すことです。
しかし、まず失敗を認めることができなければなりません。そこで、認知的不協和について理解を深めることが大切となります。
認知的不協和とは、自分の信念と事実が矛盾する状態やそれによるストレスのことです。もし、自分が強く信じていたこと(自分はデキる人だetc)と矛盾する局面に出くわした場合、あなたは自分の信念が間違っていたことを認めますか?
これは難しいですよね。事実を曲解して自分の信念を突き通してしまう傾向があるのです。
認知的不協和の恐ろしいポイントは自分がその状態であることに気が付きにくい点です。
しかも立場や影響力の高い人ほど、認知的不協和の威力は高くなります。
自分は認知的不協和に陥っていないか十二分に確認することが失敗から学ぶための大切な要素です。
失敗から学ぶためのカギ
失敗から学ぶためのカギとなる要素の1つは適切なシステムであることです。
適切なシステムとは選択と淘汰を繰り返し進化することです。生物のおける進化は「自然淘汰」によって起こるのはよく知られているでしょう。
同じようにある選択をして失敗したら、次の選択・失敗と試行錯誤のプロセスが成功のために重要となるのです。
試行錯誤を繰り返して、サービスの質を上げていく例として、リーン・スタートアップがあります。
リーン・スタートアップとは初めから完璧にするのではなく、最低限のサービスや機能を提供して、実際に使用した顧客からフィードバックを得ます。それを元に改良していき、質を高める方法です。
小さな失敗を積み重ね、都度新たな戦略を練り、検証するプロセスを幾重にも行い成功を掴み取る。これを行った人が手に入れた成功を本書では複数取り上げています。
成功する組織とは?
まず、偉人の言葉を引用します。
真の無知とは、知識の欠如でははい。学習の拒絶である。
カール・ポパー
この言葉は失敗から学ぶことを推奨しています。
成功者は「失敗は欠かせない」と考えており、学習を拒絶しません。
このような成功者は成長型マインドセットで、才能は努力によって伸ばすことができると考えています。このマインドセットの持ち主は自然に失敗を受け止めます。
一方で固定型マインドセットの人は才能は伸ばせないと考えているため、失敗した際は自分に才能がない証拠と捉えてしまいます。これにより、失敗から学べないのです。
スケールを大きくして、成長型マインドセットを持つ企業では、誠実な組織文化で失敗を非難しない環境になります。成功を収めている企業は失敗から学ぶ体制を構築されいる組織なのです。
そのためには、裁く側の人間を信頼できることで失敗をオープンにする環境ができ、失敗から学べるようになります。
もし上司が部下の失敗を厳しく非難する懲罰主義の環境であれば、失敗を隠蔽してそこから学ぶことができなくなります。同じミスが再発するなど成長は見込めません。
失敗とどのように向き合うかで人生は全く異なります。良い方向にしたいのなら、「失敗を認めて、失敗から学ぶ」ことを胸に刻み込みましょう。