本書の情報 森岡毅 『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(2016.4 角川書店)
「後ろ向きのジェットコースター?」
とUSJのバックドロップのを知ったときにそう感じました。世間でかなりの注目を浴びていたでしょう。
後ろ向きのジェットコースターなぞ、一見簡単で誰にも思い付きそうなアイデアです。しかし、それを思い付いたとしても実現できるのか、ここが重要であり困難な道であるのです。
本書では株式会社ユー・エス・ジェイのチーフ・マーケティング・オフィサー:森岡毅 氏のUSJ再建への奮闘とV字回復をもたらしたアイデアを生み出すためのノウハウが書かれています。
マーケティングを専業としている方はもちろん、誰が読んでも勉強になり且つ楽しめる。そんな一冊です。
お金が無くてもアイデアは脳に眠っている。アイデアは最後の切り札。
とアイデアの重要さが身にしみて分かる言葉がはじめにあります。ですが、中々私はアイデアマンだと自負する人はいないでしょう。大体そうです。
ですが、アイデア発想法の「イノベーション・フレームワーク」によって、アイデアマンでなくても革新的なアイデアを生み出せると言います。
著者はこのおかげで、低迷していたUSJをV字回復させることができたのです。
誰もが知るであろう、需要予測を遥かに上回る来客数を記録し大成功を収めた「ハロウィン・ホラーナイト」やバックドロップの誕生の裏側、ファミリー層をターゲットにしたユニバーサル・ワンダーランドのオープンなど、著者は数々のホームランを打っています。
森岡氏の言葉を読んで、絶対にUSJを建て直すという強い執念が伝わってきました。
とにかく情熱が凄いです。モンハンを知るために数ヶ月で400時間を超えたり、ワンピースを知るために漫画全巻を読破したりと、行動力と集中力の高さが印象的です。
マーケティングをやる人間は、何でも自分自身でやってみることを習慣にするべき(P84)
ちなみに、誰もが興味を持った後ろ向きジェットコースターのバックドロップは夢から着想を得たと言います。ベンゼン環の構造を夢から思い付いたケクレのようです。
では、どのようにしたら森岡氏のように次々とヒットアイデアを生み出すのでしょうか?
それは、アイデアを出すには「確率」を高めることが重要と言います。大海原に沈んでいる宝をシラミ潰しで探していたらいつまで経っても見つけられません。フレームワークを使うことで宝の場所を絞ることができ、例えば、戦略的フレームワークでは
の三段構えを経てアイデアを出すなどです。
著者はやみくもに頑張っていたのではなく、フレームワークを駆使してアイデアを見つけていたのです。
フレームワークに加えて、精神論、考えつくまで考え抜く諦めない心が大事で、ある問題において世界で一番考えている人の所にアイデアの神様が舞い降りるのです。
この箇所は非常に心を動かされました。
マーケティングについては門外漢でも、学ぶべき森岡氏の姿勢を目の当たりできる書です。